気管支拡張症
気管支拡張症とはどんな病気か
気管支、特に中等大の気管支の内腔[ないくう]が非可逆的(元に戻らない状態)に拡張した状態です。急性肺炎などでも一過性に気管支拡張が起こることがありますが、これは、気管支拡張症とは呼びません。呼吸器疾患のうちでは、それほど多い病気ではなく、人口1000人に2人ぐらいの頻度といわれています。
遺伝的要素の高い病気
気管支拡張症の患者の多くは、子どものころのはしか、百日咳[ひやくにちぜき]、各種のウイルス性肺炎の後遺症として起こると考えられています。
また、慢性副鼻腔炎[ふくびくうえん](いわゆる蓄膿症[ちくのうしよう])のある人によく起こります(この場合、副鼻腔気管支症候群ともいいます)。
先天性のものにカルタゲナー症候群(遺伝性で何万人に1人というまれな病気)という病気があります。気管支拡張症、内臓逆位症[ないぞうぎやくいしよう](心臓などの臓器の位置が左右逆である)、慢性副鼻腔炎の3症状をもつ病気のことです。この病気は家族内に発病者が出やすいこと、両親に血族結婚が多いこと、そのほかの先天異常を合併しやすいこと、などから遺伝的要素が濃厚です。
どんな症状がみられるか
まず、せきやたんがだんだん多くなってきて、特に膿性[のうせい]のたんを伴ったせきが朝に強く出るようになります。また、血痰[けつたん]や喀血[かつけつ]もしばしば出ます。重症例では、発熱や全身衰弱、呼吸困難をきたすこともあります。
予防法が特にありませんので、せきやたんなどの呼吸器症状が出てきたところで早めに医師に診てもらうようにしましょう。
体位ドレナージでたんの排出をさせる
気管支拡張症でもっとも重要な治療法は、たんのドレナージです。気管支拡張症のある部位を高くした体位を1日数回、20〜60分間とらせ、せきをさせたり、背中にバイブレーターで振動を与えたりして、たんの喀出[かくしゆつ]をはかります。この際に、去痰薬[きよたんやく]や喀痰溶解薬[かくたんようかいやく]を超音波ネブライザー*で吸入させると、たんがさらに出やすくなります。また去痰薬や気管支拡張薬も必要に応じて投薬されます。
超音波ネブライザー
気道に湿気や薬液を供給する噴霧器。普通のものだと水滴が10μ〈ミクロン〉以上になってしまいますが、超音波ネブライザーを使うと3μ程度になり、肺の中までスムーズに入ります。
感染症が起きたら入院治療
気管支拡張症が急性悪化し、発熱したり、たんの量が増したり、血痰[けつたん]や呼吸困難を起こす原因としては、インフルエンザ菌、肺炎球菌、嫌気性菌の感染がもっとも多いといえます。気管支拡張症はこうした感染が起きやすい病気です。感染症を起こしたときは入院治療をするようにしましょう。
治療は、たんを採取して菌を培養し、どのような菌が感染し、どのような抗生物質が効くのかを調べ、投薬をします。喀血[かつけつ]がつづき、なかなか止まらないときには、止血薬の内服、点滴静注、気管支ファイバースコープによる出血部位への血液凝固薬の注入を行います。出血量があまりに多い場合には輸血が必要となる場合もあります。内科的治療が成功しない場合には、外科的な処置が必要となります。
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