肺炎
肺炎とは肺の末梢[まつしよう](奥)の肺胞領域に起こる炎症のことで、おもに病原体の感染が原因で起こります。
肺炎を起こす病原微生物の種類によって、非細菌性肺炎と細菌性肺炎に分けられます。
非細菌性肺炎
非細菌性肺炎はさらに、ウイルス性肺炎、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎(オウム病)などに分けられます。
ウイルス性肺炎
ウイルス性肺炎の中では、インフルエンザウイルスによる肺炎がもっとも重要です。お年寄りや慢性呼吸器病のある人では重症化しやすく、また細菌感染によって細菌性肺炎に移行しやすいためです。かぜを起こすRSウイルス、麻疹[ましん](はしか)ウイルスなども肺炎を起こすことがあります。インフルエンザウイルス以外に、これらのウイルスに直接効く抗ウイルス薬は現在のところありませんので、細菌の二次感染に注意しつつ、対症療法を行います。
特殊なウイルス性肺炎として、サイトメガロウイルス肺炎があります。日本人の成人の90%以上が、すでにこのウイルスによる感染を受けていますが、普通はからだの中に潜んでいるだけで、病気を起こすことはありません。しかし、がんの末期や、臓器移植などのとき、あるいはエイズ患者で免疫能が極度に低下したときなどに肺炎を起こしてきます。
マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマと呼ばれる、ウイルスと細菌の中間のような微生物がいます。このマイコプラズマによる感染症(主として気管支炎や肺炎)は、以前には不思議なことに4年ごとに流行し、しかも流行年はオリンピックの開催年に一致していました。最近、この流行型が少し崩れて、その前後の年にも散発するようになりました。がんこなせきが特徴です。このマイコプラズマは、普通の細菌に有効な、ペニシリン系、セフェム系と呼ばれる呼吸器感染症でもっとも頻繁に使われている抗生物質が効きません。その代わりに、テトラサイクリン、マクロライドと呼ばれる薬が卓効を示します。このように使用すべき治療薬が違うので、きちんとした診断が必要とされます。学童期や若年の成人に多く、乳幼児やお年寄りに少ないというのもマイコプラズマ肺炎の特徴のひとつです。
クラミジア肺炎
オウム病と呼ばれる肺炎があります。この肺炎の病原体はクラミジア・シッタシーと呼ばれ、セキセイインコ、オウム、ハトなどに寄生して分裂・増殖します。感染・発病した鳥の排泄物[はいせつぶつ]などから空気中に飛散した病原体を人が吸入することによって発症します。病鳥に接してから1〜2週間後に、かぜと同じ症状とともに激しいせきが出て、重症の場合には呼吸困難も出現します。心筋炎、心内[しんない]・外膜炎[がいまくえん]、時に髄膜炎[ずいまくえん]を起こすことさえあります。
この肺炎が疑われたときには、自宅または近所で小鳥を飼っていないかどうか、その小鳥が病気にかかっていなかったかどうかなどを詳しく調べます。鳥と接触してかぜのような症状が出たら、医師にかかりましょう。小鳥から人への感染はあっても、人から人への感染はないとされていましたが、最近、人から人にうつる亜種が見つかっています。家族の1人がオウム病と診断されたら、家族全員が呼吸器科で診てもらいましょう。
動物が病気となり、それが人にうつる病気を人獣共通感染症[じんじゆうきようつうかんせんしよう]といいますが、オウム病はその代表的なもののひとつです。治療にはテトラサイクリンかマクロライドが用いられます。
このほかに、クラミジアが原因となるものにクラミジア・ニューモニエによる肺炎と、クラミジア・トラコマーティスによる肺炎とがあり、いずれも人から人への感染がみられるものです。
細菌性肺炎
細菌性肺炎は、一般細菌の感染によって起こる肺炎で、実に多種類の細菌が肺炎に関与します。普通は、まずウイルス感染が起きて、気道粘膜が障害を受け、それに乗じたかたちで細菌によって二次感染が起きるという過程をとります。
肺炎球菌によるもの
細菌性肺炎の代表的なものは、肺炎球菌によるものです。かつては、肺葉[はいよう](肺は右が3つ、左が2つの大きな袋に分かれています)全体をおかす、大葉性肺炎[だいようせいはいえん]と呼ばれる肺炎を起こすので有名でした。抗生物質の発達した現在では、大葉性肺炎は珍しくなり、気管支肺炎にとどまるもののほうが多くなりました。
黄色ブドウ球菌によるもの
黄色ブドウ球菌も肺炎を起こします。この菌のうち、ほとんど全ての抗生物質に耐性を示す黄色ブドウ球菌(MRSA)が最近、大きな問題となっています。
インフルエンザ杆菌[かんきん]、緑膿菌[りよくのうきん]
インフルエンザ杆菌による肺炎もありますが、この菌の場合には「慢性の呼吸器病をもっている人」に、くり返し急性の気道感染を起こすのが問題です。同じように、緑膿菌というやっかいな菌があり、気管支拡張症やびまん性汎細気管支炎[はんさいきかんしえん]などの基礎疾患をもつ人の気道にすみついて、治療をしてもなかなか取り除くことができません。
レジオネラ菌によるもの
レジオネラという、比較的最近発見された菌による肺炎があります。感染経路として、クーリングタワー(建物の屋上などに設置されている冷却塔)、エアコンディショナーなどの空調設備や給湯系を介した感染や、土壌・河川などの自然環境からの感染が知られています。日本の特徴としては、温泉、特に消毒が不十分なわかし湯を用いたおふろでの感染が多いことを知っておくべきでしょう。マクロライド、リファンピシン、ニューキノロンなどによる治療が有効です。
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