原発性免疫不全症候群
免疫には、抗体による液性免疫と、リンパ球の中のT細胞による細胞性免疫とがあって、そのいずれかあるいは両方の生まれつきの欠陥で免疫不全となります(先天性免疫不全症候群)。また、液性免疫反応に重要な役割を果たす補体が欠損していても免疫不全が起こります(表7―13)。
液性免疫不全
血液中の主要なたんぱく質はアルブミンとグロブリンです。抗体は、グロブリンに属し免疫グロブリン(Ig)と呼ばれ、G、A、M、D、Eの5種類があります。正常の場合、血液中にはIgGがもっとも多く、A、M、D、Eの順に少なくなります。
【無ガンマグロブリン血症】
5種類の免疫グロブリンが全て欠損している病気を、無ガンマグロブリン血症といいます。理由はわかりませんが、無ガンマグロブリン血症の人は関節リウマチになりやすいといわれています。
免疫グロブリンが欠損していると、抗体の作用がはたらかないために、液性免疫不全となります。定期的に免疫グロブリンを補充しないと細菌などの感染を起こしやすく、起こすと重症になります。
【IgA欠損症】
免疫グロブリンの中の、IgAだけが欠損しているものです。IgAは、鼻、気管支、腸管などの粘膜において感染防御に重要な役目をしている免疫グロブリンです。これが欠損すると気管支炎、副鼻腔炎[ふくびくうえん]、感染性腸炎などが起こりやすくなりますが、無症状で、偶然IgAの欠損が発見される場合も少なくありません。
細胞性免疫不全
Tリンパ球(T細胞)による細胞性免疫は、ウイルスやカビ類の感染から生体を守るために重要なしくみです。カビ類や細胞の中に入りこんでいるウイルスには抗体(液性免疫)が作用しませんから、細胞性免疫が欠損していると、ウイルスやカビ類の感染症を防ぐことができません。
胸腺[きようせん]の異常でT細胞が十分にできない状態を、ディ ジョージ症候群といいます。
【重症複合免疫不全】
T細胞系、B細胞系ともに欠陥があるために、液性免疫も細胞性免疫もはたらかないものです。T細胞、B細胞のもとになるリンパ球幹細胞に異常があるためと考えられます。免疫反応がはたらきませんから生後すぐから重症感染症をくり返し、治りも悪くなります。
ADA欠損症は、ADA(アデノシンデアミナーゼ)という酵素が生まれつき欠損しているためにリンパ球の発生が障害される病気で、重症複合免疫不全症になります。
ADA欠損症は遺伝子の異常部分が明らかにされ、初めて遺伝子治療が行われた病気として有名です。
原発性補体欠損症
補体は血液中にあって、抗体が微生物と結合したときに作用して、その微生物の排除を助ける役割をもつたんぱく質です。第1成分から第9成分まであります。
どの成分が欠損しているかによって違いますが、感染に対する抵抗性が弱くなります。全身性エリテマトーデスの症状が出る場合もあります。もっとも多いのは第9成分欠損症ですが、この場合は、ほとんど症状がありません。
遺伝性血管神経性浮腫[いでんせいけつかんしんけいせいふしゆ]は補体第1成分を抑制する因子が欠如し、限局性浮腫を起こす病気です。
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