インフルエンザ
インフルエンザはインフルエンザウイルスによる急性の呼吸器感染症です。かぜ症候群のひとつですが、全身症状が、ほかのウイルスによる普通のかぜより強いのが特徴です。また、伝染性が強く大流行を起こすことがあり、流行性感冒[りゆうこうせいかんぼう]ともいわれます。
流行の情報に注意する
インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3つの型があり、特にA型は約10年ごとに世界的大流行を起こします。明治22〜23年にかけてのシベリアかぜ、大正7〜8年のスペインかぜ、昭和22〜23年のイタリアかぜ、昭和32〜33年のアジアかぜ、昭和43〜44年の香港かぜなどの大流行が知られています。
インフルエンザの予防には、まず、地域、職場などでの流行の情報に気をつけておくことが大事です。
流行の規模しだいでは、学校を休校にするか学級閉鎖などの処置が必要であり、職場でもインフルエンザにかかった人を休ませるよう指導する、などの対応が必要となります。
臨床診断と病原診断
インフルエンザにかかった場合、普通のかぜよりも激しい症状が出ます。1〜3日の潜伏期の後に、急激に高熱が出て、鼻水、のどの痛み、せきなどの呼吸器症状とともに、頭痛、関節痛、腰痛、筋肉痛などの全身症状を伴うのが特徴ですので、流行時の臨床診断は比較的容易です。時には腹痛、下痢、嘔吐[おうと]などの消化器症状も出てきます。目の充血やのどの粘膜が赤く腫れたり、首すじのリンパ節が腫れることもあります。現在は診療所や病院で15〜30分程度でインフルエンザウイルスを検出できる迅速診断キットが開発され、簡単に病原診断ができるようになりました。
合併症として怖いのは細菌性の肺炎
体力のない乳幼児や、お年寄りの場合には、インフルエンザが重症にならないよう気をつける必要があります。
からだの抵抗力の落ちた人にはインフルエンザウイルスそのものによるウイルス性肺炎も起こりえますが、細菌の二次感染で細菌性肺炎にかかってしまうことのほうが多くを占めることになります。赤ちゃんやお年寄り、慢性の呼吸器疾患をもっている人などはハイリスクグループと呼ばれ、この人たちが、肺炎を起こすと、時として生命にかかわることすらあります。いったん、下がりかけた熱が再び高熱となり、呼吸器症状が激しくなってきたら要注意です。特に色のついた汚いたん(黄色、緑色、錆色[さびいろ]など)が出るときは、細菌による二次感染が起きた証拠です。
インフルエンザウイルスは呼吸器だけでなく、心筋炎や心外膜炎[しんがいまくえん]のかたちで、心臓をおかすこともあります。また、子どもではライ症候群やインフルエンザ脳炎・脳症と呼ばれる神経系の合併症が起きることがあります。病気の本態は不明ですが、発熱時に投与されるアスピリンなど解熱薬との関係も疑われています。吐き気や、嘔吐、嗜眠[しみん](うとうとする)、意識障害が出現します。
インフルエンザにかかった場合には、たかがかぜといわずに、症状が重く、長引くときには医師の診察を受けたほうが無難でしょう。特に乳幼児や高齢者、あるいは呼吸器の病気、心臓病、糖尿病、腎臓病[じんぞうびよう]のある人は、重症化する前に受診すべきです。
インフルエンザの治療の基本
インフルエンザウイルスに対し、抗ウイルス作用をもつ薬が臨床使用されるようになりました。
抗インフルエンザウイルス薬として、次の3種があります。ひとつはシンメトレルで、従来は精神活動改善薬、パーキンソン症候群治療薬として許可されていたものですが、抗A型ウイルス薬としても認められました。2つめはリレンザと呼ばれる吸入薬で、A型およびB型のウイルスに対する抗ウイルス作用があります。3つめはタミフルというカプセル薬で、同じく抗Aおよび抗Bウイルス作用を示します。数多くのかぜの原因ウイルスの中でインフルエンザだけは原因療法が可能となりました。発病の早期(2日以内)に治療を開始するとよく効きますので、インフルエンザかなと思ったらすぐに診療所や病院を受診されるようにおすすめしたいと思います。
熱や関節痛、せきなどに対しては鎮痛解熱薬、せき止めなどが用いられます。これらの薬剤にはそれぞれ一長一短があり、副作用もありますので、医師の処方に従って服用しましょう。
インフルエンザウイルスそのものには効きませんが、細菌の二次感染を起こしたときには有効な抗生物質や抗菌薬は数多くあります。ただし、細菌の種類によって、選択すべき薬剤が異なるので、医師の指示に従うべきです。また、今日の呼吸器病原細菌の多くが耐性菌となっている割合が高いことも知っておくべきで、かぜに不必要な抗菌薬を使わないことも耐性菌増加に歯止めをかけるためにも重要なことが認識されるようになってきています。
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