低血圧症
低血圧と低血圧症
低血圧とは、あお向けに寝た状態で、収縮期血圧(最高血圧)が慢性的にほぼ100mmHg以下の場合をいいます。また、立ち上がったときだけ血圧が著しく下がるものもあります。
原因がはっきりせず、しかも低血圧に伴う症状がないものについては、生命にかかわる危険がまずないことから、低血圧とはいいますが、“血圧の低い健康人”と考え、診療の対象とはなりません。すなわち、病気とはいえません。
これに対して、低血圧に伴うなんらかの症状がある場合を「低血圧症」と呼びます。多くの場合、治療を要します。
低血圧症の原因と治療
血圧が常に低い慢性的低血圧症
低血圧症には、本態性低血圧症、症候性低血圧症があります。
【本態性低血圧症】
肩こり、めまい、疲れやすい、目が疲れる、頭痛・頭重感[ずじゆうかん]がある、腰が痛い、自分の健康に自信がもてないなど、同一人物で自律神経症状や心因的症状など多くの訴えがあるにもかかわらず、いろいろの検査をしても原因のわからないものをいいます。この場合、低血圧自体は特別な治療は必要ありません。むしろ、低血圧の人は平均すれば長寿で、日本人の3大死因のうちの2つ、すなわち心臓病と脳血管障害に将来かかりにくいともいえます。ただ、症状はあるため、その症状をとるような治療が必要です。
【症候性低血圧症】
循環器の病気、内分泌[ないぶんぴつ]の病気、神経疾患、呼吸器の病気、薬によるものなど、明らかな原因があって低血圧症を示すものをいいます。このような場合には、それらの原因となる病気を治す治療が優先されます。
立ち上がると血圧が下がる低血圧症
【起立性低血圧症】
横に寝た状態では正常血圧であるのに、立ち上がると血圧が下降し、立ちくらみ、めまい、失神などを起こす場合をいいます。
起立性低血圧症には、神経疾患、糖尿病、薬の使用などによって起こる症候性起立性低血圧症と、原因が明らかでない特発性起立性低血圧症があります。
また、このほかに、学童や若い女性などにしばしばみられる起立性調節障害があります。これは、立ち上がったときに血液が下半身、特に下肢[かし]の筋肉にたまり、心臓に血液が戻りにくいために起こるとされています。
低血圧症の症状は多彩
低血圧症では明らかな原因をもつもの、あるいは起立したときに失神するものなどを除けば、ほとんど心配はありません。
とはいっても、低血圧症(本態性低血圧症)の人は、前に述べたように、いろいろな切実な悩みの多いことも事実です。人によって、症状の種類、程度は異なりますが、疲れやすい、意欲がわかない、特に朝、調子が悪い、肩こり、頭痛・頭重感[ずじゆうかん]、立ちくらみ、手足の冷え、便秘、胃腸の調子が悪い、などが一般的です。
高血圧の人に比べて、低血圧症の予後はよいのですが、症状は多彩で、しかも強いといえます。季節でいえば春先、1日の時間帯では朝、午前中に症状が強い傾向がみられます。
血圧上昇を主目的とした治療はしない
本態性“高血圧症”では、血圧を下げる治療が非常に大切であることはすでに述べました。これに対して、普通の低血圧症、すなわち本態性低血圧症では、血圧が低いからといって、血圧を上げることを主目的にした治療はしません。本態性低血圧症では、自律神経系の症状が強かったり、心気症的症状が前面に出やすいので、これらの症状の改善を第一とした治療法が選ばれ、自律神経調整薬、精神安定薬、経口昇圧薬などが好んで使われます。
これで効果が上がらない場合には、心療内科の専門医による心身医学的アプローチによる方法が、効果を上げることがあります。
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