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先天性心疾患

もっとも多いのは心室中隔欠損
50種に分類されますが、そのうち10種が特に多くみられます。もっとも多いのは心室中隔欠損で全体の60%を占めます。次いで肺動脈狭窄[はいどうみやくきようさく]、心房中隔欠損、ファロー四徴症[しちようしよう]、動脈管開存[どうみやくかんかいぞん]、大動脈縮窄[だいどうみやくしゆくさく]・離断、大血管転位の順にみられます。

心室中隔欠損

心室中隔の孔[あな](欠損孔[けつそんこう])を通って左心室から右心室へ流れた血液の分だけ肺を余分に流れます。小欠損では一生無症状で、またその半数以上は自然に孔がふさがります。大欠損では乳児期前半に心不全が強く起こります。また肺高血圧も起こりますが、肺動脈の硬化が強くなるのは幼児期以後です。強すぎて手術不可能となったものがアイゼンメンゲル症候群です。心室中隔欠損の重症例は乳児期に手術が行われますが、中等症では就学前に行います。

心房中隔欠損

心房中隔の孔[あな]を通って左心房から右心房へ流れた血液の分だけ右心室を経由して肺を余分に流れます。小児期は普通、無症状で、さらに心雑音もわかりにくいため発見が遅れることがあります。心電図が特徴的な異常を示すので、入学時の全員心電図検診で見つかることの多い病気です。そのような無症状の場合も放置すれば成人になってから症状が現れてきますが、小児期に手術すれば手遅れになりません。

肺動脈狭窄


肺動脈の狭窄[きようさく]もありますが、通常は弁の狭窄です。狭窄のため血液押し出しに余分の力がいるため右心室が肥大します。軽症は手術が不用ですが、重症は乳児期早期に心不全を生ずることが多く、すみやかな手術が必要です。中等症では成人に達してから症状が現れてきますが、通常小児期に手術をすませます。

ファロー四徴症


これはチアノーゼのある心臓病の代表です。生まれた直後よりも1〜2カ月してからチアノーゼが現れてくることが多く、またはじめは泣いたときにのみ気づきます。この病気は肺動脈狭窄[はいどうみやくきようさく]、心室中隔欠損、大動脈騎乗[だいどうみやくきじよう](心室中隔欠損のため大動脈が左右の両室にまたがる)、右心室肥大の4つの異常が重なっています。

乳幼児期に多いチアノーゼ発作に対しては薬物療法で予防しますが、効果のない場合には、根治手術またはブラロック短絡術を行います。

おもな症状は心不全とチアノーゼ
心不全とは心臓が弱って血液を十分送り出せない状態であり、呼吸は速くなり、同時に大きくなります。

そのため赤ちゃんをだっこしているときには呼吸ごとに首を前後に動かす動作に気づきますが、また、呼吸のたびに首の正面付け根や胸の下部を引っ込ませます(陥没呼吸)。肝臓が腫れて腹の上部がふくれて見えることもしばしばです。顔色は青白く、汗をよくかきます。呼吸困難のため泣き声も弱くとぎれとぎれになり、お乳も一気に飲めずに休み休みで、疲れやすい状態であることがわかります。哺乳量[ほにゆうりよう]も少なく、体重増加が悪く、やせが目立ちます。

乳児期を過ぎた子どもでは睡眠時でもからだを少し立てる姿勢(起坐呼吸[きざこきゆう])を好むようになり、またからだのむくみも現れます。

一方、チアノーゼとは動脈血の酸素濃度が低いため黒色となり、爪[つめ]や唇が紫色になることです。先天性心疾患では酸素の少ない静脈血が動脈へ混入する場合にみられ、その場合全て重症です。チアノーゼは出生時から生じている場合のほか、乳児期の早い時期は泣いたときだけ目立ち、しだいに常にみられるようになり、幼児期以後には指先が太鼓のばち状にふくらんできます。

チアノーゼに伴う症状として、乳児期では泣いたときに呼吸が速くなったり、発達の遅れや体重増加不良がみられますが、幼児期以後では走ったり激しい運動ができません。ファロー四徴症[しちようしよう]は、ほかの病気と違う特徴として、歩行中に座り込んだり(そんきょ)、急にチアノーゼが強くなり、時には意識消失やけいれんをみる(チアノーゼ発作)ことがあります。

また、心不全やチアノーゼのほか、脈拍が極端に少なかったり(完全房室ブロック)、不規則(不整脈)になることもあります。

先天性心疾患の治療


内科的治療と外科的治療の組み合わせ
【内科的治療】
主として薬剤の内服、注射ですが、これには強心薬(ジゴキシン、カテコラミンなど)、利尿薬(フロセミドなど)、不整脈の治療薬、ファロー四徴症[しちようしよう]のチアノーゼ発作予防薬などがあります。また、新生児や乳児期早期の動脈管開存[どうみやくかんかいぞん]に対して、これを閉鎖する目的でインドメタシンなど、開存持続にプロスタグランジンが使われます。

そのほか、全身管理として酸素吸入、水分栄養補給、感染症などの合併症の予防、治療が行われます。予防接種は病気がよほど重くない限り、積極的に行います。

【外科的治療】
欠損している部位などを正常構造にする根治手術と、肺動脈へ血流を増やしたり(短絡術[たんらくじゅつ])、減らしたり(肺動脈バンディング)、心房間で血液の抜け道をつくるなど、状態を改善する目的の姑息手術[こそくしゆじゆつ]があります。手術の時期は病気の種類、内科的治療の効果、病状などにより決定されます。

【カテーテル治療】
先天性心疾患のカテーテル治療(カテーテルを介した治療法)は年間1400例に達し、重要な治療法となってきました。代表的なものとしてAmplatzer心房中隔欠損閉鎖栓の使用で非手術的に欠損孔を閉鎖したり、血管や弁の狭窄部[きようさくぶ]の拡大や、病態の改善を目的に中隔欠損孔拡大にバルーン、ステント留置や最近はカッティングバルーンが使用されつつあり、効果を上げています。また以前から動脈管開存や側副血行路の閉鎖にコイル塞栓術[そくせんじゆつ]が一般化しています。


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